関節リウマチは、体を守るはずの免疫の働きがうまくいかなくなり、自分の関節を攻撃してしまう病気です。そんな状態が続くと、関節は次第に壊れてしまいます。
この「免疫のくずれ」、つまり傾いてしまった免疫のバランスを元に戻すこと。それが関節リウマチ治療の目的です。
免疫の働きとその“くずれ”
健康な状態では、免疫はウイルスや細菌などの外敵にだけ反応するよう、精巧なバランスの上に成り立っています。しかし関節リウマチでは、このバランスが崩れ、「自己」と「非自己」の見分けがつかなくなり、自分の関節を攻撃するようになります。
薬の目的は「免疫の調整」
関節リウマチの薬物治療では、この誤った免疫の働きを「抑える」のではなく、「調整する」ことが重要です。つまり、行き過ぎた免疫反応は抑えつつ、感染症などに対する防御力はなるべく保つ――その絶妙なバランスを目指します。
「抑えすぎないこと」も大切
薬が効きすぎてしまうと、今度は体を守る力(免疫)が弱くなって、風邪や感染症にかかりやすくなることもあります。そのため、患者さんの年齢、体調、生活スタイルによって、最適な薬の量や種類は変わってきます。定期的な血液検査や、日々の症状の変化をしっかりと確認しながら、医師や看護師と一緒に治療方針を相談していくことが大切です。
まとめ
関節リウマチの薬物治療は、傾いてしまった免疫のバランスを「元に戻す」ことを目指す治療です。免疫の働きをただ止めるのではなく、過剰な部分は抑え、必要な機能は残す――そんな繊細な調整が求められます。
私たちは、患者さん一人ひとりの免疫バランスを見極めながら、その人らしく過ごせるようサポートしていきます。
日本リウマチ学会専門医 服部陽介