関節リウマチについて
関節リウマチは
早期診断・治療が必要な疾患です
関節リウマチは、外敵から体を守る免疫の異常によって、関節に炎症や痛み、腫れを引き起こし、軟骨や骨が破壊されて関節の機能が損なわれ、放っておくと関節が変形してしまう病気です。患者さんの平均年齢は67歳といわれており、50歳ぐらいで発症するかたが多くみられます。早期診断・治療で症状悪化予防が期待でき、関節の変形や機能低下のリスクを下げられます。手足の関節に痛みや違和感がある場合は、お早めにご相談ください。
FEATURE このような場合はご相談ください
- 関節に痛みがある
- 指の関節が腫れている
- 起床時に手がこわばる
- 関節が動かしにくい
- 服のボタンがかけにくい
- 箸が使いにくくなった
- 朝に長引く手のこわばりがある
関節リウマチの症状について
代表的な症状
- 手足の
腫れ・痛み - 起床時の
こわばり - 関節水腫
- 変形
- 関節の痛み
手足の腫れ・痛み
関節リウマチは、手足に痛みや腫れなどの症状が起こる疾患です。痛みや腫れは左右対称に現れることが多く、日常生活に大きな影響を及ぼします。複数の関節で同時に症状が出たり、熱を持ったように腫れたりすることもあるため、手足の痛さや動かしにくさを感じる場合は早めに受診しましょう。
起床時のこわばり
関節リウマチの特徴的な症状として、起床時のこわばりがあげられます。朝起きてすぐは手に力が入りにくい、指を開きにくいなどの症状があると、関節リウマチの疑いがあります。また、毎朝起きると身体が動かしにくく、数十分程度で症状が消えて動きやすくなる場合も要注意です。
関節水腫
関節水腫は、関節リウマチによる炎症で関節内に水が溜まった状態をさします。主にひざ関節にみられる症状で、ひざの腫れや痛みをきっかけに受診し、関節リウマチと診断されることがあります。検査や診察の上、必要があれば関節に溜まった水を抜いたり、炎症を抑える薬液を注入したりといった治療を行います。
変形
関節リウマチによる炎症が進行すると、骨や軟骨などの組織が破壊され、関節に変形をきたすことがあります。好発部位は手足の指で、日常生活に困難を感じる場面も出てくることが多いです。関節の変形を防ぐためには、痛みや腫れなどを自覚した時点で早めに受診し、治療することが大切です。
関節の痛み
関節リウマチは、全身のさまざまな部位に痛みを生じる疾患です。手足の指や手首に痛みが生じるケースが多いですが、人によっては肘や肩、膝、足首などに痛みを感じることもあります。持続した痛みは苦痛や不安感につながるため、関節の痛みを自覚した段階でなるべく早めに受診しましょう。
関節リウマチの診断
最近は治療薬の進歩により、薬による関節リウマチの進行を抑えることが可能となりました。そのため、発病してなるべく早い時期に診断して、治療を始めることが重要になっております。
関節リウマチの早期診断は、1ヵ所以上の関節炎(滑膜炎)があり、その関節炎がほかの病気で説明がつかないときに、関節リウマチ分類基準(2010 ACR/EULAR)を使って診断します。この基準では、腫れている(腫脹)関節、押すと痛い(圧痛)関節の数、血液検査、急性炎症反応、滑膜炎の期間を調べます。各群の合計が6点以上で関節リウマチと分類(診断)します。
関節リウマチ分類基準
(2010 ACR/EULAR)
対象患者
- ①1ヵ所以上の関節が明らかな滑膜炎(腫張)を認める
- ②滑膜炎の原因としてほかの疾患によるものが除外できる
り患関節数 | 点数 |
---|---|
大関節1ヵ所 | 0 |
大関節2~10ヵ所 | 1 |
小関節1~3ヵ所(大関節り患の有無を問わない) | 2 |
小関節4~10ヵ所(大関節り患の有無を問わない) | 3 |
11ヵ所以上(1ヵ所以上の小関節を含む) | 5 |
血清学的検査 | 点数 |
RF陰性かつ抗CCP抗体陰性 | 0 |
RF低値陽性または抗CCP抗体低値陽性 | 2 |
RF低値陽性または抗CCP抗体高値陽性 | 3 |
急性期反応物質 | 点数 |
CRP正常かつESR正常 | 0 |
CRP異常またはESR正常 | 1 |
症状の持続期間 | 点数 |
6週未満 | 0 |
6週以上 | 1 |
関節が腫れて痛む病気には、関節リウマチ以外の、脊椎関節症、リウマチ性多発筋痛症などのリウマチ類似疾患、膠原病、ある種のウイルス感染や変形性関節症などでも同様の症状がおこることがあります。そのため、リウマチの診断は、症状や血液、レントゲン、関節エコーなどの検査だけでなく医師の総合的判断が必要です。
先生からのメッセージ
関節リウマチをはじめとする骨や関節、靱帯、筋肉、手足の神経の病気の早期発見と早期治療を目指し、自身の専門性を活かした治療を皆さんにご提供できるよう開業いたしました。
関節リウマチの治療は痛みなどの症状がほとんどない「寛解」を目指すことです。
関節リウマチの治療は薬物療法が中心となり、患者さんの毎日の生活の質(QOL)の改善や今後の生活(予後)を改善していくために使われます。
関節リウマチの治療薬には、1.抗リウマチ薬と免疫抑制薬、2.メトトレキサート、3.生物学的製剤、4. JAK阻害薬、5. 副腎皮質ステロイド(ステロイド)、6.非ステロイド抗炎症薬(消炎鎮痛薬)、7.骨粗しょう症の治療薬があります。
関節リウマチと診断された時には日本リウマチ学会の関節リウマチの治療ガイドライン(2020年)を参考に適切な治療を行いますので、関節リウマチでお悩みのかたはご相談ください。
当院の治療方針
早期発見・治療で
症状や負担を軽減します
当院では、患者さんの症状や負担を軽減するために、早期発見・治療を心掛けております。お困りの症状を丁寧にお伺いし、十分に検査・診察を行うことで、適切かつ迅速な治療をご提供いたします。患者さんの負担が一刻も早く和らぐように努めますので、気になる症状は当院までご相談ください。
薬物療法を中心に、
リハビリも加えて
辛い症状にアプローチします
当院では、患者さん一人ひとりの症状や経過に合わせた薬物療法をメインに、リハビリを組み合わせた治療プログラムをご提案しております。関節リウマチは、間質性肺炎や貧血、骨粗しょう症などの合併症が起きる場合もあるため、ご年配のかたが安全な治療経過をたどれるように、多角的な観点からサポートさせていただきます。治療に関するご質問はお気軽にお問い合わせください。
関節リウマチの検査
診断のための検査
関節リウマチでは、早期診断、早期治療が重要です。関節の痛みや腫れの原因となる病気は多数ありますが、そのなかで関節リウマチを診断する上で重要な血液検査は、リウマトイド因子(RF)と抗シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)です。関節の炎症が強いと、C反応性タンパク(CRP)が陽性になります。CRPはリウマチ以外の膠原病や炎症を起こすさまざまな病気、感染症などでも上昇するため、注意が必要です。
画像検査では、関節のレントゲン検査で骨や軟骨にリウマチ性の変化がないかを診ます。骨が破壊されると、リウマチに特徴的な骨が欠ける骨びらんという所見がみられます。関節エコー検査は、レントゲンでは写らない関節の腫れや炎症を見つけることができるので、リウマチを早期に発見できます。
関節リウマチの活動性に関する
経過や治療効果をみるための
検査
関節リウマチの活動性(病勢)を評価するためには、関節の腫れや痛みについて診察するとともに、CRPやメタロプロテアーゼ(MMP)-3を検査します。MMP-3は、関節の内側にある滑膜の炎症を反映します。これらの血液検査はリウマチの状態に応じて、定期的に行われます。また、関節のレントゲンで関節破壊の進行があるのかをみるために、半年~年1回は検査を行います。関節エコー検査も治療の効果や炎症の状態をみるために定期的に行います。
薬剤の副作用チェックのための検査
抗炎症薬(消炎鎮痛剤やステロイド薬)や抗リウマチ薬の服用により、肝機能、腎機能の障害、白血球や赤血球などの血球異常、肺障害(肺感染症や間質性肺炎)などがみられることがあります。血液検査に異常があっても自覚症状はないことも多いため、リウマチが安定していても定期的な血液検査、胸部レントゲンやCT検査が必要になります。また、メトトレキサートや生物学的製剤、JAK阻害薬の開始前には、血液で肝炎ウイルスや結核の検査、胸部レントゲン、胸部CTなどの検査を行い、感染症の有無について事前に確認します。
関節超音波(関節エコー)
関節エコー検査は、関節リウマチがひきおこす滑膜の炎症を直接観察する画像検査で、関節リウマチの正確な早期診断と治療効果の判定に有用です。炎症を起こしている関節滑膜は健常な場合と異なり厚みをもち関節液が増加した状態となり、内部に異常な血流信号を観察することができるため、触っただけではわからない滑膜炎も調べることができます。
関節リウマチの治療
薬物治療
- 抗リウマチ薬と免疫抑制薬
- メトトレキサート
- 生物学的製剤
- JAK阻害薬
- 副腎皮質ステロイド(ステロイド)
- 非ステロイド抗炎症薬(消炎鎮痛薬)
- 骨粗しょう症の治療薬
など
リハビリテーション
関節リウマチ治療におけるリハビリテーション(リハ)の目的は、筋力増強・関節の動きの維持・破壊された関節の修復・関節の保護・失われた機能の代償にあります。このために理学療法(物理療法・運動療法)、作業療法、装具療法、その他(在宅ケアなど)が行われます。
これらの中で、運動療法は、関節可動域(ROM)の獲得、筋力増強、傷んだ関節の修復のために行われます。一般的に、関節軟骨の新陳代謝に必要な栄養は関節を運動させることによってはじめて関節へ届けられる仕組みになっているため、傷んだ関節を修復させるためには運動が必要となります。しかし関節運動負荷が過度であった場合、弱って強度を失った関節の破壊はむしろ進行してしまいます。疲労や痛みが翌日も含めて残らない程度に適切に運動する必要があります。